「実はさ、明日良美の誕生日なの。それでね、明日ネズミーランドー行くじゃない?」

そう。

明日は朝から東京に行って、渋谷とか台場とか周ってから夜にネズミーランドに行って、オフィシャルホテルでもう一泊してから帰ることになっている。

「そこのホテルにさ、ケーキを頼んであるの。それで良美を祝ってあげようっていうのが、ネズミーランドに行くホントの狙いなの。良美、ネズミー大好きだからさ」

ネズミーランドに行くという予定は、富士山ランドに行くことが決まってから少し後に陽菜が言い出したものだ。

「あ、それで急にネズミーに行きたいとか言い出したんやな」

「うん。もともと理沙がネズミーで良美を祝おうって考えてて、私もそれに参加するつもりだったの。でも、この旅行と時期がカブッちゃってるし、それなら理沙達も一緒に富士山に行って、すぐ後に一緒にネズミーに行こうって話になったの。だからあの二人呼んじゃった」

陽菜の話を聞くと、俺は嬉しくなって、はしゃぎ回りたい衝動に駆られた。

「なんや!そうやったんか。俺はてっきり、陽菜は俺と二人っきりの旅行が嫌なんやと思ったわ」

「あはは、そんな訳ないじゃん。…努は、大好きだよ」

そう言った陽菜が今までで一番可愛く見えて、俺は気がついたら陽菜にキスをしていた。



「なぁ、陽菜?」

眠る間際に陽菜に質問する。

「ん、何?」

「何で良美って、声が出ーへんようになったん?」

以前に似たような質問をしたことがある。
陽菜はその時、教えてはくれなかった。

「なんかさ、それを知らんかったら俺だけが除け者のような気分やねん」

陽菜はとっさに否定した。

「そんな事ないよ。努は私達のれっきとした仲間だよ」

「じゃあさ、同じ仲間の苦しむ理由すら知らない俺って何なん?別に興味本位で聞いてる訳やないで」

俺がそう言うと、陽菜は「そっか。うん…そうだね」
と、重い口調で、良美の過去を語った。