「えぇ!志音って、いつも朝海斗と話てんの?」

樹里ちゃんの事件から1週間たち。

ようやくおちついた日々をとりもどしていつも通り昼食をとっていたとき、教室中に風音の声が響いた。

その声で教室にいる全ての女子が振り向いた、いや、振り向いたって言うよりは皆チラチラ見ている。


これはヤバイ。


「違うよ、たまたま学校に来る時間が同じで、話したのは3回だけ」

私の言葉で痛かった女子の視線が一気に消えた。

…怖かった。

「風音、大きな声で言わないでよ…」

「ごめんごめん」

私はため息をついたとき、風音は「それにしても」と話を進める。


「それにしても…なんでだろ」

「え?何が?」

「海斗は、朝早く来る奴じゃないのに」

「そうなの?」

「うん、いつも「眠たいから」って言って学校遅れて来てた」

「そうなんだ」


なんで来る時間かえたんだろ?私が初めて速く来たときはいなかったよね?


「明日になったらきっとたくさんの女子が朝早く学校に来てるよ」

「なんで?」

「当たり前じゃん、海斗はモテるんだから」

「あ…」

そうだよね、女子から人気があるんだから海斗さんは。

そう思うと、なんか悲しい。


…あれ?何で悲しい?


私が悲しむ必要なんてないよね。
うんそうだよ、おかしいよ

「海斗も海斗よ、さっさと彼女作ればいいのよ」

「そうだね」

私達がそんな事を話してたとき、教室のドアが開く音がした。