ー空音ー
「~♪~~♪これは~♪いらない♪」
軽快な鼻歌を口ずさみながら、衣服の整理をする。
着物全部桂から買ってもらったもので、今も申し訳なく思っている。しかも全部高価なものだ。本当ならすべて京へと持って行きたいのだが、多すぎて持っていけない。だから今持ち物整理をしている途中だ。
たくさんある着物の中から気に入ったものを選び、重箱へとつめていく。
が、しかし。
あっという間に重箱はいっぱいでもう何も入らなくなった。
むなしい思いを募らせながら、重箱の蓋を閉めた。
記憶がなくなり、6年が経った。
最初は不安でたまらなかった。
思い出そうとしても、鈍い痛みが走るだけ。
でも、普通でいられたのは桂先生や、栄太郎さん、高杉さんとかのおかげ。
記憶がこのまま戻らなくってもいい。
そう思えた。



