「・・・空音。こっち。」


「あ、はい。」


内心は怖くてたまらなかった。
まだ闇に慣れていない瞳からは、闇しか映さない。
どこを走っているのかも分からない。


普段は栄太郎さんに手をつないでもらっているということに赤面したりしているけれど、今はそんな余裕はかけらもない。



少しだけ走り、立ち止まったと思ったら襖が開く音がする。


「入って。」


言われたとおりに入る。
その部屋は円形の窓が開いていて、そこから満月が見える。
そのせいか、部屋は月の明かりで薄暗い。
しかし、少しは明るいのでありがたい。



「空音。押入れに入って、隠れてて?絶対に物音を立てちゃだめだよ。」


「・・・え?」


吉田はまだとかれてない手を引いて押入れの前に立つ。


「ほら。急がないと、新撰組がくるよ?」

「じゃ、じゃあ!栄太郎さんも一緒に・・・」

「だめ。俺は戦わないと。」

「い、嫌です!!一緒に待って、この事件が過ぎるのを待ちましょう?!」



なぜかここで離れると、すごく嫌な予感しかできなかった。
栄太郎さんは優しく微笑んで、押入れを開く。


「やです!!いや!行かないで!!なんで戦うんですか?!嫌です!!」


叫ぶ私を無視するかのように、強引に私を押し入れに入れる。