部屋は意外と綺麗で広く、まるで桂さんの屋敷を見ているようだ。



「ありゃ?桂さんは?」
「んー?あっちのお嬢ちゃんが代わりだとよ。」
「あー。おさねーなー。」
「可愛げがあっていいんじゃねぇか?」


部屋にいる人はみんな、人懐こくって、初めて会うのに疎外感はあまり感じなかった。


「あ、あの・・・あたし、何をすれば」
「何も、座って話を聞いてるだけでいいよ。気は使うだけ無駄だ。」


そういって優しく吉田が空音の頭を撫でる。
張り詰めた緊張が、徐々にほぐされていく。
ちょうどよい具合に緊張がほぐれてきたとき。


「御用改め!!新撰組である!神妙にお縄につけ!!」


下の階から、大きい声が聞こえてきた。
同時にわいわいとしていた空気は一気に張り詰め、あたりは暗くなる。誰かが点いていた明かりを消したのだろう。



「・・・チッ。こんなときに。薫。桂んとこいって知らせてこい。香織は空音の保護を。」


高杉の控えめの声が空音の耳に届いたとき、薫は窓から外へと飛び出していた。


「ここ、2階・・・」

「ごたごた言うてる暇あるんなら避難するんや!急ぎ!こっちや」
「香織ちゃんは晋作の護衛に回って。ここで死なれちゃ困るから。空音は俺が責任持って守るから。」

「な?!何言ってんだ?!」

「今外に出たら危険だ。ちょうど新撰組に出くわすかもしれない。香織の足なら逃げ切れるだろうけど、空音もいる。」

「・・・」


高杉は無言でうなずき、部屋を出て行く。池田屋はもう、刀独特のぶつかり合う甲高い音がこだましていた。