「単純すぎて嫌ってるんじゃない。僕は、ただ・・・香織のことを、純粋に好きになったんだ。」


「は?」


双子なのに?驚くほどに似ているのに?ていうか香織ちゃんを好きになって何故私のことを嫌いに・・・


そんな思いが脳裏をかすめては消えていく。




「似ているから?双子だから?血がつながっているから?僕はそんなしがらみにとらわれるのは嫌いなんでね。ずっと隣で香織を見てきた。最初は『双子の姉』としか見ていなかった。けどね、ずっと一緒に居るうちに、いつの間にか掛け替えのない存在になっていた。
これが兄弟愛なのかもしれない。これが普通の愛なのかもしれない。歪んでるのはわかってる。
でも、好きなんだ。」



儚げに、さびしそうに苦笑する薫くんの顔は、どこか憂いを帯びていた。



「一緒に居るうちに、ずっと香織のことを見ているうちに、2つ香織の新しく芽生えた感情を感じ取った。一つめは『空音』という存在に興味を持ち始めていること。二つめは、高杉さんに抱く恋愛感情。」



「か、香織ちゃんが私に興味を持ち始めて嫉妬して私のことを嫌いになったの・・・?」



だとしたら大迷惑だ。とんだとばっちり。



「違うよ。僕は誰よりも香織の幸せを願っていると、胸を張って言える。そんなガキ臭いことしている暇があったら香織のこと狙ってる奴らを絞め殺すよ。」



「・・・」



「高杉さんは香織と同じように君を・・・」



続きを言おうとしていったん止めて、薫くんは空を仰いだ。



「これ以上は言わないよ。君のことを応援するつもりもないし。」