ぼやける意識の中、ゆっくりとまぶたを開く。 「……起きた?」 視界には私を覗き込む香織ちゃんと、その後ろには天井が映る。 「あれ…?」 香織ちゃんは微笑む。 「おかえり。」 目からは無意識に涙が溢れ、止まらない。 「あ、あれぇ…、ぉかしい…な、涙が…」 香織ちゃんは懐から布を取り出し、私の頬に当てた。 「ここな、京にある桂さんの屋敷や。安心せぇ。もう軟禁される必要もない。」 ふと、涙が止まる。 「栄太郎……さんは?」 香織ちゃんは苦々しく顔を歪めた。 「自害…や。」 「え……?」