空音の失った記憶が、戻りつつある。
そう考えると呼吸も乱れ、手先が震える。
必死でそれらの症状を抑え、震え気味の声を絞り出す。
「・・・出雲、か。空音。」
「?はい」
「どこで、その名を聞いた?」
「・・・そうですね・・・はっきりとは覚えていないのですが、夢の中でです。」
夢の中。
単なる偶然?
それとも何かが原因で?
何がどうあれいずれは空音の記憶が戻ること日は近い。
「・・・空音・・・無くした記憶を取り戻しても、ずっと傍にいてくれるか・・・?前居たところへと、戻ってしまうのか?」
気が付いたら、そんなことを口走っていた。
空音は桂の悲しそうな声を聞いて、うつむいていた顔を上げる。
「いえ・・・!!そんなわけ、ありません!記憶が戻ったからって離れませんよ。迷惑をかけているのは分りますが・・・せめて恩返しはさせていただきたいですから。もらった恩をそう簡単には捨てませんよ。」
焦っていた顔からゆっくりと微笑む空音の顔を見て、桂は何処か安心感を覚えた。



