その時だった。


『え゛!? 何? わからんな…。耳が遠いんで、もっと大きい声で、話してもらえますか? ……あかん。……聞こえへん』



母の声だった。



クラスが、ざわざわ、し出した。振り向けば、母は隣にいたおじさんに、足元を指さされ『落ちてますよ!』と言われていた。




『あのおばさん。耳が聞こえないんだって! 普通じゃない人なんだよ。可哀想』




『あのおばさんに触ったら、障害者の菌もらっちゃうのかな?』




『俺。ぜってぇ、ヤダ! 障害者になりたくありませーん!』




ゲラゲラ笑いながら、耳を塞ぐ男のコの横で、仲のよかった女友達が言った。




『あのおばさんって、沢村さんのお母さんでしょ』




凍りついたあたしに、
鋭い視線が集まった。