「身の上話をしたところでてめぇの入隊を認めるわけにはいかねぇ。」
「タダでとは言いません。私と一本勝負をしてくださいませんか?」
「一本勝負だと…?」



土方の眉間(みけん)の皺(しわ)がさらに深くなる。



「はい。私が勝てば入隊許可を、負ければ立ち去ります。」
「俺に勝てるわけねぇだろ。」
「それはわかりませんよ?これもでも幼少より剣術を学んでおります。」



杏里は土方を見据(みす)え微笑む。土方は鼻で笑い答えた。



「いいだろう。ついてこい。その勝負受けてやるよ。
まぁお前が勝てば訳も教えてもらうからな。」



くるりと背を向けるとスタスタと歩いていった。
杏里は土方の背を見ながら心の中で笑った。



とりあえず成功か。
あー、お婆ちゃんに礼儀作法教え込まれて正解だった。
私に勝てるとでも?
無理に決まってんだろ。
これで心配は一つ減ったかな。
さぁて、どうやって勝つかなぁ…。
土方さんの事だ、本気でかかってくるはず。
いや、私の出方を見るために手加減しそうだな。
やっぱ様子見に、こっちも手ぇ抜くか。



頭の中でものすごい勢いで作戦が練られて行く。
現代では負けなしだったが、ここではそうはいかないと、
杏里はどこか心の中で思っていた。