辺りを見回すが沖田の姿は見当たらない。
急いで探し回るがやはりどこにもいない。


「総司~っ!」


京都ってこんなに広かったっけ。
小さいときに父さんと母さんに車で連れてきてもらっっただけだよ!
ちょっと涙出てきたぞ。
これって、動かない方がいいよな…。


探し疲れた杏里は石段に腰をかけて沖田が来るのを待った。


数時間後。



「あ~ん~り~っ!!」


頭上から降ってくる声に顔を上げると総司がいた。


「なんで言ったそばから迷子になってんの!」
「ご、ごめん…。」


沖田は血相変え息を切らして今にも倒れそうだった。


「普通、労咳を患ってる人間に走りまわらせるかよ。」


ゲホゴホと咳をしながら悪態づく。


「どうせ今日の非番だって杏里が近藤さん達に話したからでしょ。」
「なっ、知ってたのか…?」
「最初からバレバレ。ほら、帰るよ。」


今度ははぐれないようにしっかりと握って。


なんだ全部バレてたのか。
ハハッ…嫌われたかな。
まだ気持ちも伝えてないって。


「怒ってなし。嫌いにならないから。」


杏里の心の中を見透かしたかのように言った。


「だからさ、そんな泣きそうな顔しないでよ。」
「泣きそうな顔してる?」
「すっごい不安そうな顔してる。」


振り向かず灯が灯る都を二人歩く。
ふと、浴衣の袖を引っ張って立ち止った。



「総司の事が、好き…。」