藤堂が立ち去った後、沖田に見つめられ続ける杏里。


「な、なんか顔についてる…?」
「ううん。何もついてないよ?」


ただじっと顔を見つめているだけなので、対応に困る。


「い、いつまで見てんのさ…。」
「照れた顔も可愛いね。」


だんだん恥ずかしくなってきたのか顔を背けた。


「あのさ、なんか、追い詰められてる気がするんだけど。」


いつの間に壁際に追いやったのかトンと杏里の背後の壁に
手をつき杏里の耳元へと顔を寄せる。


「ちょ、沖田…!」
「好きだよ。」
「なっ……!」


こいつ正気か?!
いやいや、こいつのことだからからかってるんだ…。


「冗談だろ?ほら、離れろ。」
「冗談なんかじゃ…」


言いかけたとたん土方がやってきた。


「昼間っから白昼堂々いちゃつくんじゃねぇ。
総司、こいつの配属を伝えるから広間に召集かけてこい。」
「せっかくいい雰囲気だったのに。」


子供のように口を尖らせて拗ねる沖田。
杏里はごつんと沖田の頭に拳骨を食らわせ、じとりと沖田を睨んだ。


「そう怖い顔しないでよー。」



(でも、俺は本気だから。)



耳元で囁くと、じゃぁね。
と言いながら去り際に杏里の唇にキスを落として行った。
見ていた土方は目を見開き凝視(ぎょうし)していて、
一方された本人は魂が抜けたように茫然(ぼうぜん)としていた。