執事と共に雪遊びを。

しかし、車椅子は、するする、と移動を始めてしまった。

慌ててグリップを握り直す。

まるで独りでに動き出したかのようだった。

不審に思って回りを見渡す。

そこは、病室の前だった。

――434号室。

例の病室はこの階ではないが、丁度真下の病室だった。


「どうかしたかしら」


老婦人が、不思議そうに振り返った。


「いえ、大丈夫です」


春樹は、再び車椅子を押し始めた。