「大体、こんな曇った鏡じゃ、自分の顔も見れねえだろうよ」


と、マナベは備え付けの布巾に洗剤をつけて乱暴に拭いた。


「お気遣い、ありがとうございます」

「早えとこお前ぇが戻ってこねぇと、お嬢が泣き出しちまう」

「マナベさんっ」


からかうマナベに、恵理夜は顔を真っ赤にさせて叱声を飛ばした。

しかし、マナベは笑うだけで取り合おうともしなかった。