執事と共に雪遊びを。

「そして、絵が真横を向いているというのは錯覚ですね。本来はこのように書かれていたのでしょう」


春樹は、ひょいと絵の端を持ち上げ、床と額の底辺を平行にした。


「本来はわずかながら斜めに書かれた絵でしょう。斜めにすると余計に手前に出ているようにも引っ込んでいるようにも見えますからね」


絵の錯視に惑わされていたのだ。


「じゃあ、車椅子が動き出した、ということは」

「こういうことでしょう」


春樹は、点滴キャスタの鉄柱を離した。


「あ……」


恵理夜の驚きの声と共に点滴キャスターはするすると独りで春樹の手元を離れた。