次の日、阿部先生に連絡した。

具合が心配だったけどもう退院してもいいそうだ。

「その隠れ家はどこにあるんですか?」

「あの…ここを真っ直ぐ…」

何故かあの小屋に行く事を避けたくなった。
行ったら大変な事になりそうで、後戻り出来ない気がして。

「ここ…ですか?」

小さくこじんまりとしている小屋があった。

「はい…」

お父さんとの思い出が蘇る。

車を降りるといつも私はこの中にある地下室に連れて行かれる。

中にはおもちゃが山ほどあったから退屈はしなかった。

だけどお父さんは決して上に連れて行ってくれない。
帰るときは地下室のドアをノックしてくれる。

来た時と余り変わっていなかったが最後にここに来た時、微かに甘い香水の香りがした。

お父さんの事をいろいろ思い出していると、鋭い痛みが頭を襲う。

「うっ…」

小さく声を漏らす。

だが阿部先生は気づいていない。

私はそのまま眠るように気を失った。


「おやすみ…多分、君の出番はもうないよ…」

誰かが私の脳内に語りかけてきた。

しかし、私は意識を手放すしかなかったようだ。