『よーい…パンっ』



澄み渡った青空

あたしは
全力で走った。


これ以上ないくらいに全力で

けど、拓也がいない試合は
全然楽しくなかった。




「華~、やっぱすごいわ」



余裕で一位をとった。

盛大な拍手だって貰った

けど、嬉しくなかった
一番のライバルがいなかったから


あたしはきっと拓也の事
好きだったのかもしんない。

すっごく苦しい

…けど、奪う事も
話す事もきっと

今までとは違う気がする

きっと、『彼女』
という存在が

今、すっごく拓也が
遠くにいる気がした。


もう手に届かない存在だって―――