「三年生のピッチャーは肩壊されて、俺がエースやってる。…体験来てくれて、ありがとう。初心者は……いる?」
顔を見合わせ、しーんとなる部員。
「…いないか。じゃあ、とりあえず元ピッチャーはグラウンド5周、キャッチャーは3周、走ってくれ」
結構広いグラウンドを走る、ピッチャーとキャッチャー。
「…おい、お前が野田翔太?」
話しかけてきたのは、ピッチャーの吉川雄弥さん。
「そうっすけど…」
「想像通り…」
意味深な言葉と笑いを残して、走り出す吉川さん。
「…なんだったんだ?」
「有名やからやろ」
アキレス腱を伸ばしながら軽い口調で言う、毅。
俺たちは走り出した。



