目を覚ますと、部屋はもう明るかった。
梅雨明けのからっとした太陽が、カーテンを通り抜けてあたしに降りそそぐ。
何時だろう……、そう思って時計を見ると、時間は9時だった。
ほんとなら、冬夢くんの朝ご飯を作らなきゃいけない時間。
でもあたしは、動く気力がなかった。
昨日あったこと。
思い出すだけで、嫌。
家に帰ってからは、すぐにベッドに入ったけど寝れなかった。
冬夢くんが珍しく優しくて、おかゆを作ってくれたりしたんだけど。
それも食べられずに、あたしはベッドに丸まっていた。
あたしが眠るまで、冬夢くんはずっとあたしのそばにいてくれた。
手を握って、ただ微笑んでいてくれた。
それだけで、どんなに安心したことか……。
でも、あたしは雇われの身。
いつまでもぐったりなんかしてられない。
「…………起きよう」
声に出してみただけなのに、体はすくっと起き上がってくれた。
顔洗って、歯磨きして、下に行こう。
いつもより遅い朝ご飯になってしまったけど、今日だけは許してもらおう。
顔を洗うと、少ししゃきっとした。
歯磨きすると、少し気分がよくなった。
下に降りてリビングのドアを開けると、そこにはもう冬夢くんの姿があった。
「おはよ、ちゃんと寝れた?」
冬夢くんは自分で入れたらしいコーヒーを飲みながら、新聞を読んでいた。
「おはようございます。………寝れました」
「あ、朝ご飯は俺が作っといたから」
あたしがキッチンに向かおうとすると、冬夢くんはそう言った。
「え…、すみません、あたしがいつまでも寝てたから……」
「あー、違う違う、今日は妃菜がお客様の日だから!」
あたしが謝ると、冬夢くんはそう笑った。
「妃菜はずっと休み無しだろ?だから今日は妃菜がお客様の日。俺が妃菜のやりたい事に付き合うから。とりあえず、座ってろよ」
冬夢くんは、そう言ってキッチンに入っていった。
冬夢くんは、きっとあたしのことを気づかってそう言ってくれてるんだね……。
使用人の身分なのに、申し訳ない気もするけど…。
今日だけは甘えさせてもらお……。

