「なー、妃菜ちゃんって彼氏いんのー?」




「………………」




最近、周りが妃菜ちゃん妃菜ちゃんうるさい。




特にうるさいのがコイツ、力弥。




「無視すんなよー」




「無視なんかしてない」




「じゃー教えてよ!マジで狙っていー?」




力弥は、明るい茶髪に着崩した制服、見るからにチャラいやつ。


勉強はかなりできるらしいが……、こんな奴が妃菜の彼氏だったら完璧に殴りかかっているだろう。




「絶対無理」




「なんでだよー」




頬を膨らます力弥を無視して、俺は英語の予習を始めた。




「俺、狙っちゃうからね!?お兄ちゃーん!」




「狙うなら勝手にしろ。どーせお前みたいなタイプ、妃菜嫌いだから」




そう言い放って、俺は英語に集中した。




言い切ったものの、妃菜がチャラい奴を嫌いなんてわからない。




でも、きっと嫌いだ、と期待をこめた。