凍りついたように動けないあたしを、冬夢くんが抱きしめる。
「…………もう、もう妃菜には近づくな」
遥兄ちゃんに冷たく言い放って、冬夢くんはあたしの背中をさすってくれた。
「……妃菜、大丈夫だから…、帰ろう」
「………………うん」
あたしはゆっくり立ち上がった。
「遥兄ちゃんには……もう会いたくない」
あたしは魂が抜けたように天井を見ている遥兄ちゃんに言った。
絶対、絶対ゆるさない。
階段を降りても、家には誰もいなかった。
「美和さんが、舞ちゃんと買い物に行くって言ってた。………ここに来るとき、すれ違ったんだ」
冬夢くんがボソッと言った。
「だから余計、心配した」
あたしは無言だった。
外の生ぬるい空気が、気持ち悪い。
大切な人に裏切られたのは、これで2度目。
心の奥のしぃちゃんが、にっこり笑っている気がした。
『ほらね、やっぱりあんたもお父さんとお母さんといっしょに死ねば良かったのよ』
しぃちゃんのアニメの主人公のようなかわいい声が、聞こえてくる。
「………………やだっ」
「妃菜?」
冬夢くんが立ち止まった。
頭の中は、しぃちゃんの声が続いていて。
『その人も、きっとあんたを裏切るわ』
あたしは怯えたように冬夢くんを見つめた。
「…妃菜?歩けないなら車呼ぶか?」
「……………裏切らないで」
もう止まったと思っていた涙が、また溢れ出す。

