メイドさんの恋愛事情





遥兄ちゃんといっしょに料理を作ったあの時も、買い物をしたあの時も、いじめられたあたしを庇ってくれたあの時も、遥兄ちゃんは、あたしのことを好きだったの……?


そんなはず…、ないよ…。


あの優しい笑顔も、“妹”に向けたんじゃなくて、“女のあたし”に向けてたの……?




そんなはず、ない…




「……嫌だ……」




涙が溢れ出る。


遥兄ちゃんは、あたしのいつも味方だった。


でも今は、違う。




「妃菜……?」




「そんなはずない!遥兄ちゃんが、遥兄ちゃんがあたしを好きなはずないもん!」




泣きじゃくるあたしに、遥兄ちゃんは複雑そうな顔をうかべた。




「妃菜、帰るぞ」




あたしの手を握って、冬夢くんが言う。