「………妃菜さあ、これがどういう状況かわかってんの?」
「…………え?」
「押し倒されてる、って言うんだよ」
遥兄ちゃんはそう言って、にやっと笑った。
違う……
いつもの遥兄ちゃんじゃない…
いつもの遥兄ちゃんは、こんな笑い方しない…
「遥兄ちゃん!どいて!」
なんか…、嫌な予感がする…。
あたしは遥兄ちゃんをぐいぐいと押した。
……びくともしない。
「妃菜さあ、誘ってんだろ?」
「な、なに言って…」
「上目遣いも必死な姿も、誘ってるとしか見えないんだけど」
そう言って、遥兄ちゃんはあたしにキスをした。
………なんで……!
どうして……?
ファーストキスなのに…!
「やだっ、やめてよ!」
「やめない。」
遥兄ちゃんは、あたしの制服のすそから胸を触ってきた。
「………!なにして…!」
「ただ自分の欲望に素直なだけだけど?」
違う…!
こんなの、遥兄ちゃんじゃないよ…っ
優しい遥兄ちゃんはどこに行ったの…
「嫌だよ、遥兄ちゃん嫌だよ!」
もう、遥兄ちゃんはあたしの声にも反応せずに、あたしの唇や胸を触っている。
「助けて………」
叫べば、きっと美和ママが来てくれる。
だけど、叫んだら遥兄ちゃんが美和ママに責められちゃうよ…
お世話になった遥兄ちゃんに、迷惑かけるわけにいかない…。
「助けて…!」
こんな小さな声で叫んだって、誰も来てくれないのに。
それはわかってるけど、やっぱり大声でなんて叫べないよ…
いつの間にか、遥兄ちゃんの手はあたしのスカートにまで移動していた。
「やめて…助けて…」
あたしの目から涙がこぼれ落ちた。
嫌だ、嫌だ…!
助けてよ、助けて…
「助けてよ、冬夢くん…!」

