男がそう聞いてきた。
あたしはゆっくりと上体を起こした。
「良かった。一生寝たきりになるかと思った」
そう言って男は笑った。
あたしは上体を起こして初めて気付いた。
あたしが今まで寝転んでたのは白いソファの上。
あたしのいる白いソファから約三メートル先に茶色の扉。
左側には長机。…と、男が地べたに胡座かいて座ってる。
長机を挟むようにしてもう一つ、机の向こうに黒いソファがある。
壁は白い壁。
あたしの膝には毛布がかかってる。
「調子はどう?」
「……」
頭が痛い…。金属バットで頭を殴られてる感じ。
「大丈夫?」
「あの……」
「何?」
「ここ…は…」
あたしがおそるおそるそう聞くと、
「ここ?」
男があたしに聞き返してきた。
ここ以外どこがあんだよ…。

