「...私に、時間をください...って」


「時間は、いくらでもあるよ?」


隠せない焦りのせいで、声が震える。


「涼介...ごめんね。私、言ってなかった。一番、大事な人に本当のこと隠してた」


”一番、大事な人”


痛みつけられてた胸に、その言葉が染み渡る。


「もう...時間は、ないの」


お前に、時間がないわけないだろ?


時間はあるだろ?


ずっと俺と一緒にいたもん。


お前には、俺と同じ分の時間がある。


「どうしよう。どうしよう。怖いの...時間がないの...」


太ももの横で頼りない手を握り締める。


この手で君を守れるだろうか。


守れないかも知れない。


「私ね、病気なんだって......っ...」


君は小さな両手を顔の前で絡め、しゃがみこむ。


その姿を見下ろすことなく、俺もしゃがんで...


君の両手を包んだ。


「怖がらないで...?俺が、隣にいてあげる」


隣にいることしかできない。


「守ってあげるから」


守ってあげれないかもしれない。


でも......。


心に誓った。


俺の精一杯で、君を守るって。


君のあと少しの時間を、増やしてあげる。


「守って...くれるの?」


「守るよ」


君が大切だから。