夕日はとっくに沈んでいた。


空は漆黒。


「1、2、3、4、5...」


リビングから洗面所に聞こえる数え歌。


「11、12...あれ?わかんなくなっちゃった」


洗面所にいた俺は、君がいるリビングに向かう。


そこに......。


窓から身を乗り出して夜空を見上げてる君。


「15、16、17、18...」


小さな背中が可愛かった。


...震えてる。


小刻みに震えてる背中に、俺が着ていたパーカーをかける。


「涼介...」


寒くて赤く染めた鼻。


震えてるのは背中だけじゃなかったね。


唇もだね。


俺のほうを向いたら、見えたよ。


「薄着じゃ、寒いだろ?」


コクリとうなずいた君の長いまつげ。


涙が乗ってるよ。


それに赤く濡らした大きな瞳。


怖いことでもあったの?


悲しいことでもあったの?


「......寒かった...」


声までも、震えてる。


「涼介のパーカー...暖かい」


その涙、拭いてやってもいいか?


服の袖で、流れる君の涙を拭う。


「泣くなよ...?」


何あったのか心配すっから。