翌日のクシャナ村は役人や、他の村からの野次馬でひしめき合っていた。
ドクは駆けつけてきたガジェットにこう説明した。
絶滅したはずの狼族の生き残りが村を襲い、サルヴェナ村のカガミが退治した、と。

死んだ村人の半数はドクとサロメとカガミの3人によって埋葬が済んでいた。
残りの半数は現在、役人と生き残った少数の村人によって埋葬されている。
ドクは悲しみに打ちひしがれていた。
生き残った村人は自分とサロメを含めて、たった10人。
100人近くいた村人は数時間の間にそこまで減ってしまった。
自分に村長を名乗る資格さえも、もはや持ち合わせていないだろう。
ドクは今日中に辞任すつもりでいる。

そしてサロメは黙々と村人の墓堀りをしていた。
サラのことが気になって仕方がないのだが、体を無理に動かすことで気を紛らわしていたのだった。

「サロメさん、少し休んだほうがいい。朝からずっと休んでないじゃないか」

陽が天にさしかかった頃、村の男がサロメを心配して言うが、本人の耳には届いていないのか、サロメは手を止めようとしない。

「あ、村長…。サロメさんを止めてくださいよ。あのままじゃ過労死しちまう」

ドクが村人たちの様子を見に来たところに男が言う。

「…放っといてやれ。サラを失ったんだ。今は、そっとしとくのが一番だろう」

眉間にしわを寄せたドクがそう言い、男はサロメの後ろ姿を見つめた。
生き残った村人のほとんどが家族や大切な人を失ったのだ。
悲しいのはサロメだけではない。
そう思う心と、やはり同情してしまう心とで葛藤しつつ、男は自分の仕事に戻った。