村へ戻る道を、ドクはずっと悩みながら歩いた。
緑の匂いも、鳥のさえずりも、風に揺れる木の葉の音も身に感じない。
どうにかしなくては。
だが村長の立場でも役所の決定には逆らえない。
もどかしい。
ただひたすらに考え続け、そうしているうちに村に着いてしまった。
解決法は見つからないままだ。
村の中は朝よりも騒がしくなっており、役人が入り口に2人立っていた。
手には身の丈ほどもある警棒を持っている。

「何なんだ一体…」

役所の行動の早さに、ドクは焦りを覚えた。
村の中央には処刑台が造られている最中だった。
働いているのはクシャナ村の男たちで、役人が周りで指示を出している。

「おい!村人に造らせるとは何事だ!お前たちが造ればいいだろう!」

憤懣やる方ないドクは入り口の番をしていた役人の1人に言った。

「ガジェット様からの命なのです。村人たちには連帯責任として、ルカ少年を処刑する台を造れと」

役人はしれっと言ってのけ、ドクは怒りを通り越して戦慄を感じた。
ガジェットめ…。
陽は天を過ぎ、午後の光へと変わっていた。

クシャナ村の役所である小さな家には役人が1人見張りとして扉の前に立ち、中には捕らえられたルカがいた。

「なぁ、別に逃げないからさぁ、これほどいてくれよ。最後ぐらい好きな人の傍にいさせろっての」