時を同じくして村の入り口で騒ぎが起きていた。
群がる村人の中央には立て札があり、赤く文字が連なっている。

『クシャナ村のルカを虚言の罪で死刑に処する』

大きな字でそう書かれ、その下に小さな字で委細が書かれていた。

「そんな馬鹿な…」

ドクは立て札を読み、顔から血の気が引くのを感じた。
指先が冷たくなってゆく。
立て札には“本日の日暮れに執行”と書かれている。
ドクは急ぎ役所へ走った。
何かの間違いであってほしい。
そう思う心で、反面、自分を責めていた。
ルカの嘘を止めなかった自分を。
たとえサラとの約束だったとしても、止めるべきだったのだと。
とても老体とは思えない速さで、ドクは森を駆け抜けた。