ルカは少し遅れてドクの家に着いた。
中へ入ると今に男とドクが向かい合ってソファに座っている。

「それで、いったい誰からそんな話を聞いたのだ」

ドクが男に問いかける中、ルカはそろそろとドクの隣に座った。

「俺はただ、村の連中が話しているのを聞いただけなんだ。誰が言い出したのかは知らない」

少しぶっきらぼうだが、ドクの威圧に押されて畏怖しているのが見て取れる。
自分が来るまでの間に一喝でもされたんだろうな…とルカは思う。
男はドクに、山を1つ越えた先のサルヴェナ村に住むカガミだと名乗っていた。

「噂の出所は分からんのか。しかし、そんな信憑性の低い話を鵜呑みにするな。村が被害に遭ったのは気の毒だが、狼はもういないのだから。ルカ、お前もだ」

隣に座っているルカを見るドクの目は、心なしか悲しみを帯びていることに、ルカは気付く。

「でも、じいちゃん…」

「噂の原因はお前なのだから。謝りなさい」

ルカの言葉を遮り、ドクは目の色を変えずに言った。

「誤解させて悪かった…です」

「俺も冷静さが足りなかった。だが、こんな質の悪い嘘はもうやめてくれ」

カガミはうなだれて、心底疲れた様子でため息を吐く。
それを見たるかはしっかりと頷いた。