クシャナ村の警備隊長ガランは高慢で職務怠慢だと、周りの人は口々に言っていた。
だのに警備隊長を続けていられるのは、家柄とその権力のおかげだ。
そしてガランは体の弱い、美しくて優しいサラを気に入っている。
自分の悪い噂や評判を聞いても、分け隔てなく接する少女。
優しくされたのは、幼い頃に死んだ母親以外で初めてだった。
あの笑顔が欲しいと思った。
自分なら、手に入れられると思っていた。
だがサラの隣にはルカがいた。
ルカがサラに気があることなど、明々白々だ。
あのガキさえいなければ…。

ガランの胸は躍っていた。

「お前、狼の居場所を知っているのか!?教えろ!どこにいる!!」

求めていた答えが見つかった喜びと、復讐への怒りとでルカの肩を掴む手に力が入る。
痛がるルカをよそに、男は激しく揺さぶる。

「あああわわわ…!!は、ははなぁせえぇぇ!!」

なんとかしようともがいてみるが、とても解放してくれそうにない。
困り果てるルカはいよいよ気持ち悪くなってきた。

「何をしておる!やめんか!」

少しかすれた、けれどよく響く叫び声が男の動きを止めた。
集まっていた村人達が表情を明るくする。
一斉に視線を集めたのはドクだった。

「村長…」

ガランはドクを見て内心舌打ちをする。
いいところだったのに、邪魔が入った…。