2人でいくつか桃を食べた後、丘を降りてサラの家に戻ろうとした。
すると村の中がなにやら騒がしい。
村の中央に位置する十字路に人だかりができている。

「何かしら?」

サラが人だかりに近づこうとした時。

「近づかない方がいいぞ、サラ。巻き込まれちまう」

いつの間にか、ルカとサラの間に男が立っていた。
大柄で髭をはやし、村人とは違う、役職の制服を着ている。

「ガランさん…。何があったんですか?」

サラが振り仰ぎ、ガランと呼んだ男はクシャナ村の警備隊長をしている。
ガランは35歳で未だ結婚もしていない。

「他の村から来た奴が騒ぎを起こしてるらしいんだ。なんでもこの村にいる狼をやっつけにきたとか叫んでたな」

警備隊長のくせにやる気を見せないガランは、ルカの顔を横目で見ながら話した。
暗にお前のせいだと目が語っている。
サラは1人、胸の内がざわつくのを感じていた。

「狼はどこだ!この村にいるんだろう!?俺の村をめちゃくちゃにしやがったんだ!!」

人だかりの中心から男の叫び声が聞こえる。
男は狼族が争いをしていた当時、被害を受けた村の者だった。

「ガラン隊長、何とかして下さい!そんなとこで見てないで!」

警備隊の若い隊員がガランを見つけて駆け寄ってくる。