じーっと見上げてくる少女の左右で色の違う瞳を見返しながら、青年は口を開いた。

「私はハイド・ベルイファルト・フェイルヴォーテ。フェイルヴォーテ国の第一王子にして王位第一継承者だ。そなたはリシュナティア・メルヴィール・アルベルティーニを知っているか」
「・・・・・・・僕がそのリシュナティアだが」
「・・・・・・・・・・嘘だろ?こんなチビが?」
「失礼な。チビだと悪いのか?」

 少女―――リシュナティアは不機嫌そうに言った。

「殿下。間違いなく彼女があの有名な魔女のようです。・・・・・・・少々お小さいようですが」
「何なんだお前らは!さっきからチビだの小さいだの!ちいさいのがそんなに不思議か?」
「不思議と言うか、魔女っつったら絶世の美女とか言われているじゃないか。・・・・まあお前も顔は悪くないが」
「・・・・・・・・・・・・・喧嘩を売りに来たのか?貴様」
「殿下に向かって何という――――!」

 リシュナティアは、もう一人の眼鏡の青年が抜いた剣を、瞬きせずに見つめた。

 その切っ先はリシュナティアの目と鼻の先で止まるが、まったく動じない。

「ふん。何の用で来たのかさっさと言え。僕は忙しいんだ」

 仮にも一国の王子に対して随分な態度を取るリシュナティアに、ハイドはぐ、とつまりながらも従者である青年を制し、口を開いた。