6畳くらいしかない真っ暗闇のシステム室の隅っこに座り込むと、膝を抱え、途方に暮れる。

コンピューター専用のこの部屋には電話もなく、時計もなく、四方が壁で窓すらない。


佐久間主任がIDカードを認証スキャナーにかざしても無反応。

戸を叩いて助けを求めても、帰って来るのは無反応と言う絶望。


外の様子が分からない。

このシステム室に入ってからどれくらい経ったのかも分からない。



「停電したのかもな」


部屋の隅の向こう側から、佐久間主任のため息混じりの声が独り言のように耳に届く。


「佐久間主任、私たち……いつ出られるんでしょうか?」

「さぁな。助けを呼ぶ手段がないのが痛いな」


せめて携帯さえ持っていれば……

せめてあの時、バッグに入れさえしていれば……

もしくは、システム室に行くって、誰かに置き手紙さえしていれば……


はぁ……。

今更、後の祭りだ。


どうしよう。

今日、課長に会えると思っていたのに、こんなことになるなんて。

まさか、このままずっと誰にも気づいてもらえなかったらどうなるの?


いやだ!


課長に……

課長に……


会いたい!



「こんな時さ、奥田課長だったらどうするんだろうな」

「えっ?」

「あ、いや、ごめん。俺さ、いつも何か行き詰った状況になると、どうしても考えちゃうんだよな。
あの人だったらどうするだろうって……」


ふと、課長の仏頂面が脳裏に蘇る。


こんな時に思い出す顔がそんな顔だなんて、課長、恋人として減点です。


でも、心にほんのりと灯りがともる。


「課長だったら、きっと、こう言うと思います。『大丈夫だ。必ず、俺が何とかする』。
何とかなるわけない時でも、きっと課長はそう言う気がします」


答えながら、しみじみと課長の存在を強く感じる。


そんな人だから、きっと恋に落ちてしまったんだって、今、分かったような気がした。