翌朝、寝相が悪い田吾作のキックに顔面を直撃され、目をパチクリと開ける。

次の瞬間、驚いて飛び起きる。

村で貸し切ったホテルのスィートルームには、朝まで宴会で盛り上がってノタレ寝したらしき村人がゴロゴロ。

はっとなり、もう一度辺りを見回す。

「課長!」

何度見回しても、課長の姿がない。

朝陽に輝く太陽。

8時を指す時計の針。

昨日、アサイチの便でNYに経つと言った課長。

「そんなぁ~。起こしてくれてもいいのにぃ」

田吾作の足をべしっと叩き、八つ当たりする。

ううん。
もしかしたら、課長は起こしてくれたのかもしれない。

一度寝たら、爆弾が落ちても決して起きない杉原家の血を恨む。

「はぁ~~」

がっくしうなだれる。

そして、昨夜落とさなかった化粧を落とすために、ズルズルとダルイ体を引き摺って、バッグを取りに隣室に向かう。

と、その途中、私のケータイがパッシングしていることに気付く。

まさか!

まさか!!

私は急いでケータイをバッグから取り出し、パチンと開く。

なんかメールが入ってるっぽい!!

課長だ!

次第に頬が緩む。

やっぱり夢じゃない。

私、課長の恋人とかゆうヤツになったんだ!

メール表示ボタンを押す。


「…………はい?」

短い文章に私の肩がズルリと落ちる。


【行ってくる】


「これだけ?なんで?『愛してる』とか『好きだ』とかあまあまらぶらぶメッセージじゃないんですか?これじゃ、業務連絡です!課長!!(怒)」


うるっとしている私の頭上をキーーンと音を立てて、ジャンボジェット機が飛んで行った。