ん、なわきゃないか。

だけど、ドキドキが止まらない。

動機。
息切れ。
めまい。

訳わかんない。
自分の体なのに……

課長に聞えそうなくらいの心音を、ゴクリと唾を飲み込んで押し込める。

「どうした？顔が赤いが、熱でも出たか？」

課長の手がスムーズに私のおでこに伸びる。

人がせっかく努力しているのに、心臓が喉まで飛び出しそうになる。

思わず、手に持っていたフォークを床に落としてしまう。

「俺が取ろう」

課長の上半身がテーブルの下に沈む。

そのひとつひとつの動作に心臓が動揺する。


本当は聞きたいことが山ほどある。


でも、今、一番聞きたいのは、

「どうして、私達、ホテルにいるんでしょうか？」

これっしょ！

よぉぉぉぉっし、聞くぞ。


拳に力を込めて質問しようとした時、課長の顔がヒョイとテーブルの上に現れる。

「なんだ。ったく、お前は小学生か」

課長が今まで見たことも無いくらい、クシャクシャの笑顔になる。

そして、彼の手が私の方に伸びて、頬に付いているごはんを取ると、パクリと食べちゃったんだ。