買い物袋の中から食材を出しながら、ふと考える。

図々しかったかな。

しかも、料理を作って待ってるなんて……重いかな。

でも、初めて一緒にホテルに泊まった時、課長、言ったんだ。


『ここの朝食もそれなりにおいしいが、この間食べたお前の作った弁当の方がおいしかったな』

『また作って来いよ。この前は、作って来るな、なんて言って悪かったな』


今度の料理もおいしいって言ってくれるといいな。

腕をまくると、パスタ作りから早速取り掛かる。

好きな人の喜んでくれる顔を想像しながらの料理が、こんなに楽しいなんて思わなかった。

課長は後2時間ほどで帰ってくる。

だから、とびっきりの笑顔ととびっきりに美味しい料理で課長を迎えたいなぁ~……なんて。

ルンルンルン♪
ルンルンルンのルンルンルン♪

パスタソースもばっちり!

それから、ポテトサラダをマッシュして、パイ生地を焼いて……。

「課長が帰ってきたら、なんて言おう……。『先にお食事になさいますか?その前に、お風呂?それとも、わ・た・し?』な~んてね。キャーーー!!」

「じゃ、お前で」

ん?

空耳?

今、課長の声が……。

まさかね。

と、思った瞬間、後ろから誰かに抱きしめられる。

振り向けばそこには課長が……。

「か、課長?!」

「早めの便で帰ってきた。ただいま」

課長が耳元で囁き、腰が砕けそうになる。

「お……お帰りなさっ」

声を発する間もなく、課長の唇に言葉を奪われてしまう。

長くとろけるようなキスに、淋しかった1ヶ月の想いが溶けていく。

「先に火をつけたのは、お前だ。
 責任を取れよ」

課長はいたずらっぽく笑うと、私のおでこにコツンと自分のおでこを当て、私を軽々と抱き上げた。