「ところで、安川は進路決まったのかよ?」
3人で教室に向かいながら、立川が聞いた。
「あー…まぁ…」
自分のことばかりで、香奈の話を聞いてなかった。
「香奈は何になるの?」
「それは、秘密」
「え…」
秘密って…
「秘密じゃなくて、まだ決まってないんだろ?」
立川がすかさず、突っ込むとー…
「決まってるよ!!けど、まだ迷ってるから…」
いつもハキハキ喋る香奈が、しどろもどろになってる。
無理に聞いちゃダメだよねー…
「そっか。何か相談とかあったら、聞くからね」
「ありがとう、泰葉」
立川も察したのか、それ以上は聞かなかった。
「で、そういう立川は進路は決まってるけど大丈夫なの?」
さっきの仕返しなのか、香奈がいつもの調子に戻った。
「大丈夫って何が?」
溜め息を含めながら、立川が返した。
「うちの学校から医学部に進学した生徒なんか、1人もいないんでしょ?教頭たちは、初の医学部進学の生徒誕生にウキウキしてるみたいだけど」
「香奈…」
そんな受ける前からプレッシャーをかけるようなことをー…
「安川より俺、カナリ頭良いから大丈夫だよ。安川は、人の心配してないで勉強したら?俺は、安川の頭の方が心配だよ」
立川も笑顔でイヤミを返す。
「なっ…何よ!!」
「まぁ…まぁ…」
このピリピリとした空気…中学受験を思い出させる。
「泰葉、行こう!!」
そう言うと、香奈はドンドンと足音を立て早足で先に行ってしまった。
「あ…香奈…」
香奈のことも気になるけど、立川くんもー…
ちらっと、背後にいる立川を見た。
「…自分で進路を決めれること自体、うらやましいよ」
悲しげに歪む、立川の表情。
この間、図書室でみた表情と同じー…
「立川くん」
「え…」
いきなり声を掛けたのが驚いたのか、まだ私がここにいたことに驚いたのか、立川が目を見開いて見ている。



