「昨日、香奈に教師に向いてるんじゃないかって言われたの。私と先生が似てるからって」
「あぁ…それで、聞いてきたんだね」
「うん。そうやって言われた時に、何か…心がトクンって熱くなったの。進路のことで悩んでたからかな?私、教師に向いてるんじゃないかって思えてきちゃって…」
「そっか…妹尾さんが教師かー…」
そう言うと、立川は黙ってしまった。
ドクン、ドクン。
どうして黙っちゃったんだろ?
香奈や養護の先生に言われただけで、進路を決めようとしてることに呆れてるのかな?
「あ…やっぱー…」
やめとこー…
「うん。妹尾さん、向いてると思うよ」
「…え!?」
思ってもみなかった返答に、驚く。
「高橋と似てるからってわけじゃなくて、妹尾さんの長所を生かせると思うよ」
「え?」
長所って…
「自分のことより、周りを気にかけてるとこ」
「でも、それはー…」
先生に注意されたことでー…
「高橋は妹尾さんのことを想って、自分のことだけを考えてほしいって言ったんだよ。今の時期は特にね」
優しい笑みを見せながら、立川が話を続ける。
「時には短所にもなるけど、長所にもなる。なかなかできることじゃないよ?自分を犠牲にしてまで、他人のことを考えて行動するってことは」
「私、犠牲になってるなんてー…」
思ってもない。
「そう、そういうとこ」
「え?」
「高橋より良い先生になると思うよ?妹尾先生」
「!?」
今、妹尾先生って…
立川の表情を見ると、さっきの優しい笑みではなく…面白がってる笑み。
「立川くん…」
「はい、妹尾先生」
「もう…」
恥ずかしい…
顔が真っ赤になってしまう。



