「ありがとう、岩瀬くん」
保健室に向かっている途中だが、お礼を言った。
「いえ…妹尾先輩のためなら」
「え?」
「本当…こんな熱でぐったりしているオッサンのどこがいいのか、俺にはわかりません」
「…」
あ、そっか。岩瀬くんは、まだ別れたのを知らないのかー…
「妹尾先輩には、勿体ないー…」
「私たち、もう何の関係もないの」
「…え!?」
驚きのあまり、岩瀬の足が止まった。
「関係ないって…別れたんですか?」
ドクン。
「うん…」
「どうして!?」
岩瀬の声が荒くなったのがわかった。
「俺のせいですか?」
ううん。
「岩瀬くんのせいじゃないよ」
違う。
「だったら…」
「とにかく、岩瀬くんが気にすることじゃないから。それより早く保健室行こう?岩瀬くんも大変でしょ?」
そう言うと止まっていた足が、再び動き出す。
「…」
「…」
再び動き出した時には、お互いに無言だった。



