「・・・笑って悪かった」

キィっと、高橋先生の椅子を引く音が静かな準備室に響く。


「立川・・・俺は怖かったのかもしれない」

「え?」


「妹尾が俺のために何かしてくれるのは、嬉かったよ。けど、妹尾が傷つく必要はないんだ」

「・・・」

「今回、岩瀬のことで色々あっただろ?関係のない妹尾が傷つくのを見て、ちょっと考えたんだ」


「・・・」

「お前らも大事な時期に入るし、これからは自分のことだけを考えて欲しいんだ」

「・・・」


「立川が深読みしなくても、妹尾と安川に言ったのが本心だよ」


「じゃあ、妹尾さんの気持ちは?」

「!」

「高橋先生は一方的に伝えただけで、妹尾さんの気持ちを聞いてないんじゃないんですか?」

「・・・」

「まぁ、妹尾さんのことだから高橋先生のことを想ってそのまま受け入れたんだと思うんですけど」

「!」

「お互いを想い過ぎてて、怖くなっちゃったんですね」

「・・・立川、本当にお前はー・・・」

「バカップル」

「たまにイラっとするよ、お前には」


ハァーっと、大きな溜め息をついたのは高橋先生。


「真剣に考えた俺がバカでした。付き合いきれません」


そんなことはおかまいなしに続ける、立川。


「お前が勝手に首突っ込んできたんだろ?」

「あ、そうだ。高橋先生から別れを告げたんですから、余計なことをしないでくださいね?」

「余計なこと?」


「妹尾さんに彼氏や好きな人が出来ても、口出さないでくださいってことです」


「!」


「大人なんですから、自分の言葉には責任を持ってください。それじゃ」


言いたいことを言うと、立川は準備室から出て行ってしまった。




再び、静まり返った準備室。






「あいつは、本当にー・・・」



高校生か?


痛いとこばっか突いてきやがってー・・・





「はぁー・・・」



大きな溜め息が静かな準備室には、とてもよく響いた。