「風呂長い!」
奏は部屋着姿で言う。
「…ご、ごめん」
「…千秋。そこ座って」
奏はソファーの真ん中を指差した。
でもあたしは、ソファーではなく、ソファーの前…ラグの上に正座して座った。
それを見た奏はローテブルを挟んであたしのむかいに同じように正座して座る。
「えっとまず…千春は俺の前の彼女です。写真…見ただろ?」
「…はい」
「…で。千春は同じ野球チームのヤツの女だったって話したよな?
今はそいつとより戻してんだけど…そいつ…俺の兄貴なんだ。」
「…つまり。俺は兄貴の女…て言うか…兄貴の嫁と付き合ってたって訳。今兄貴達は東京に住んでて、
この間はたまたま千春が子供連れてこっちに帰って来てたみたいだけど…」
「…奏は不倫してたの?」
「…そういう事になる」
「…不倫…か…」
いきなり重い話だなぁ…
「兄貴も実は他に女いてさ。その相談を受けてたら、いつの間にか千春とそうなった…って感じ。
ちなみにあの写真の子供は兄貴と千春の子供だからな?」
…よかった…奏の子供じゃないんだ…
あたしはホッとした。
「…結局。兄貴が女と別れたから、千春は兄貴に戻ったんだけど。
正直、俺は兄貴達が離婚したらいいのに…なんて思ってた。
でも…千春はやっぱり兄貴が好きだったみたいだから。」
奏はコーヒーを一口飲む。
「俺が振られた…の。
…で、失恋引きずってた時に…千秋に出会って。
一目惚れ…」
「……」
「…で。何か質問ありますか?」
「…んっと…
土曜日…は千春さんに会った?家入った?」
「…会ったよ。さっきのファミレスで。家には入れてない。」
「何話したの?」
「兄貴の事を少し。惚気95%愚痴5%」
「…そ、それだけ?」
「そうだよ」
あたしは安心して力が抜けた。

