あたしはバッグを掴んで、奏の前を通り過ぎようとした。
奏はあたしの腕を掴む。
「どこ行くんだよ?」
「どこでもいいじゃん!」
あたしは涙を腕で拭き取りながら答えた。
「元カレん所?」
「関係ないでしょ?」
「…行かせない」
「離してよ」
「普通行かせるか?自分の女が違う男んトコ行くのをほっとける?」
「……」
−♪♪♪♪♪−
今度は奏の携帯が鳴る。
携帯を見た訳じゃないのに、誰からの電話かなんて想像がつく。
半同棲してるって知ってるくせに電話してくるなんて。
余裕以外のなんでもない。
「早く…出なさいよ」
奏はあたしの腕を掴んだまま渋々電話に出た。
「…はい。あぁ…。今ちょっと…無理。」
あたしは奏の腕を振り払う。
「よかったね。より戻せて」
そう言ってあたしは部屋を出た。
−−−−−−−
マンションを出て、しばらくまっすぐ歩く。
何やってんだろ…あたし。
ホントに奏と千春さんがより戻したらどうすんの?
自業自得…じゃ済まないよ。
来た道を振り返る…
奏…
追いかけて来て…
お願い…
駅に着く。
奏は追いかけて来てくれなかった…
あたしは地下鉄に乗り、自分の家に向かった。

