「言わなかった……?言えなかったんだよっ!」



清香は泣きながら、怒っていた。


泣いたことは何度もあるけれど、怒った顔を見るのは初めてだった。



「お前、何怒ってるんだよ?」



「怒るわよ!」



下を俯きながら、涙を流す清香。



長い髪が、頬に張り付いていた。



「泣くの、やめろよ」



俺は濡れた頬についた、清香の髪の毛を、指先でやさしくはがしながら、ハンカチで涙を拭いた。



「ひっく…ひっく…うえぇん……」



こんな子どもみたいな清香の泣き方も初めてだった。



さっき怒ったのといい…清香ってこんなに子どもっぽかったっけ?