しかも涙目だ。


狼は背中をさすりながら少し考えていた。

先刻の赤ずきんの事を。

背中の痛みは持ち前の回復力でなんとか和らいだが、今度は別の箇所がズキズキと痛みだした。

赤ずきんの事を考えた時だ。

あの強く印象に残った赤頭巾を被った女の子。

あの赤頭巾の下の顔はどんな感じだったか、その顔を思い出す。

しかし赤頭巾が印象に強く残りすぎて中々顔が思い出せなかった。


なんとか思い出せたのは赤頭巾から出ていた肩までの茶髪。

少し薄くて明るい色だった。

狼は自分の少し長い後ろ髪を摘んで自分に見えるように目の前に移動させた。

髪の色は、茶色。

赤ずきんと同じ色。

そう思うと先刻までのズキズキする痛みがくすっぐったいものに変わった。