狼と赤ずきん

「あ、お祖母さんが病気なの。この道を真っ直ぐ行ったところに一人で住んでるから、お見舞いのブドウ酒と上等なお菓子を届けに行くようお母さんに頼まれて…今はその家に行く途中よ」


赤ずきんより命知らずがいた。


といっても流石に「人喰い狼」の自分といえど。


病気持ちの死にかけ老婆などを喰べたいとは今後とも絶対に思わない。


「へぇー。赤ずきんは偉いんだね。お祖母さんの為に森のなかへ一人きりで…」

「そ…そう?別に偉いわけじゃないと思うけど!」

確かに。

命懸けで来てるのに偉い偉くないは関係ない。

例え本当に偉人だとしても人間は人間なので狼にとってはただの食料でしかない。

もちろん罪悪感など全くない。

どうせどんな偉人とて、いなくなれば自然に皆から忘れられていくんだ。

自分が罪悪感に苛まれる必要はこれっぽっちもない。