狼と赤ずきん

「…「オオカミ」…さん?」

教えてもらったからか、反射的に呼ばれた自分の「名前」。

「ん?…うん、そ。狼。よろしく……君は?」

どこか違うイントネーションが腑に落ちず、呼び慣れていない「名前」に少し動揺してしまい曖昧な返事になってしまった。

ごまかす為に今度はこっちが名前を聞いたが、女の子はまた悩み出した。

「…………」

名前に悩むなんてどうかしてる。
悩む必要なんてどこにもない。
自分とは違ってちゃんと持っているはずだ。
少なくとも人間はそういうものだと認識してる。

女の子は意を決して口を開いた。


ヤバイ。


名前を言うだけなのにやけに真剣な女の子にまた笑いそうになる。

何かと自分のツボにはまる女の子だ。