狼と赤ずきん

そんな初めての感情に逆らう事なく、寧ろすんなりと受け入れ、狼はひたすら笑い続けた。

女の子の存在を忘れてしまって、だ。

「あ…謝ってるの!?」

突然聞こえた女の子のからの文句に、女の子の存在を思い出した狼はすぐ謝った。

「あっ…ゴメン…」

自分でも驚くほど素直に出た謝罪の言葉。
その言葉に裏は無く、心からの謝罪の言葉だった。
その狼の言葉を聞いた女の子は。

「…もう………ふふっ。なんだか…もう馬鹿馬鹿しくなっちゃった…」

不機嫌な顔から、段々柔らかい表情になっていき最後には笑っていた。

狼もまた笑った。

しばらく聞こえた二つの笑い声が狼にはとても心地良かった。

人間と一緒に楽しく笑うなんて、これは間違いなく初めての事だ。