何か上を通過したように感じた。
この跳躍は決して人間のものではない。
だとしたら、やはり狼が現れたのだろうか。
ならば、もう逃げるのは無理なのか……?


「ヤァ」


「!?」


赤ずきんがそう考えた直後、優しい声が聞こえた。

それは先程頭上を跳んだ狼から---ではなく。


自分と同じ、自分のよく見知った、人間の男だった。


男は赤ずきんを見て

「ハジメマシテ。赤頭巾のお嬢ちゃん」

優しく友好的な笑みを浮かべ赤頭巾に挨拶をした。

その男は、革の帽子を被っており、その下からは白より銀に近い髪と少し長めの茶色の後ろ髪がみえた。