「飴の力は偉大だ」 そう言って彼女は 紅茶の飴を僕に渡した。 病院を出て1人、口にしてみた。 「飴の力は偉大だ」 ダウンジャケットのポケットの中で 赤い袋に包まれた飴がゆれる。 降ってきた雪が鼻先にあたり、そっと消えた。 赤い包みを開けて薄茶色の飴を口に放ると 当たり前に紅茶の味が広がった。 こうして僕らは飴を食べる。 忍び寄る闇を消すように。 彼女の抱える不安を分け合うように。 雪が溶けてできた水溜まりを上から覗くと 雪はすでに止み、空からは冬の薄い太陽がのぞいていた。